米国で活躍する盲目の検事 有罪率でも引けを取らず
米国の検事は法廷の場で、陪審員の前で弁護士と激しい火花を散らす。時には法廷内を動き、証人席に詰め寄って質問することもある。米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のパサデナで働く検事フィル・ウォジャックさん(49)は、この道22年のベテランだが、ほかの検事と大きく異なる点がある。それは、彼は盲目の検事だということだ。
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検事は時として膨大な捜査資料に目を通し、被疑者や被害者との接見もある。そのハードな仕事をこなしてきたのが、ウォジャックさんだ。レイプ、児童虐待、家庭内暴力などの事件では、有罪率は8割で、健常者の検事と同じ実績を残している。
米『デイリー・ニュース』(電子版)によると、ウォジャックさんは16歳のときに失明した。母親が妊娠中に風疹(ふうしん)にかかった影響だという。それまでは、父親や兄弟がやっている、希少貨幣の鑑定の仕事をするつもりだった。だが、この道は絶たれた。
ウォジャックさんは法律家の道を目指すことにした。大学では期末の宿題は、まず録音テープに吹き込み、それをタイプライターに打ち込んだ。こんなことで法律家になれるのだろうかと悩み、退学の危機もあった。しかし、1984年にサンフランシスコにある大学のロースクール(法科大学院)を卒業した。
教授や地区検事の強い推薦を受け、ロサンゼルス郡の検事の職を得た。ウォジャックさんには、3人のアシスタントがついている。手足となって働いてくれる人だ。法廷内では、裁判が始まる前に、判事、証言、陪審員席まで自ら歩いて距離を計測する。法廷内を歩き回るときなどの準備だ。
盲目の検事であることの利点について、ウォジャックさんは、「陪審員が、自分が盲目とわかると強い関心を向けてくれる」と話す。
目が不自由なため、健常者の検事があまりやらないことをやる。現場に出向き、犯人が侵入した窓を自ら通り抜けて確かめたりするのがその一例だ。
2004年にレイプ・強盗の被害に遭った20歳の女性は、目の不自由な検事が、事件を担当できるのかと不安を訴えたことがあった。女性はその後、心を変えたという。
その女性は、ウォジャックさんが「レイプ」という言葉を一度も使わずに、接してくれた、その思いやりに感謝している。被告が有罪になるまで2年半かかったが、時折電話をくれ、激励してくれたという。法廷で対峙(たいじ)するある弁護士からも「彼はフェアで、正直だ」と評価されている。
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