“市民感覚”に驚きも 量刑テーマの模擬裁判
東京地裁で二月末から今月初めにかけて、新たに裁判員制度の模擬裁判があり、今回は強盗致死罪を認めた二十歳の被告の量刑がテーマ。評議では無期懲役と有期懲役の違いや年齢への配慮などをめぐって”市民感覚”が発揮され、現職の裁判長が驚く場面もあった。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200703030318.html
被告はタクシー内で運転手にナイフを突き付けて現金を要求し、抵抗した運転手を刺して失血死させた上、現金約八千円を奪ったとして強盗致死罪で起訴されたと想定。
同罪の法定刑は死刑か無期懲役で、裁判所の情状酌量で七年以上の有期懲役に減軽(酌量減軽)できる。現職検事が務める検察官役は無期懲役を求刑。同様に現役弁護士の弁護人役は「まだ若く未熟で、更生は可能」として有期懲役を求めた。
楕円のテーブルを囲んで現職裁判官三人と裁判員役の男女六人(会社員二、会社役員、図書館職員、看護師、主婦各一)が評議を開始。裁判員役の意見は死刑一、無期懲役三、有期懲役二に分かれた。裁判員役の一人は「当初、基準が分からず困った」と振り返る。
裁判官が「若さを刑に反映させますか」などと発言。評議の中で裁判員役が重視したのは「刑はどのように執行されるのか」だった。
無期懲役は二十―三十年後に仮釈放されても保護観察などが続くが、有期懲役では、満期後は自由になる。有期を主張した裁判員役の一人は「刑罰を想像した上で決めたかった。未成熟な人による偶発的な犯罪で、一生監視されるのは重すぎると思った」と語る。
裁判長はこうした論議を意外に感じたのか「みなさんには、刑がどう執行されるかが重要なんですね」と漏らした。
数時間後、無期懲役三人、有期懲役三人に。裁判官三人がいずれも「有期」の意見を述べた。裁判員役の一人が「無期」から「有期」に転じ、七対二の多数決で有期懲役に決まった。
その後の懲役年数の検討でも意見は三十―七年の間で大きく分かれ、裁判員役は「何年が妥当か分からない」。裁判長も「一年の違いを説明するのは難しい。感覚的でいい」と述べた。同種事件の判決例が示され、最終的に裁判員法に従って、判決は多数意見の懲役二十年に決まった。
裁判員役を務めた「みずほフィナンシャルグループ」室長の足立康徳さん(45)は評議後「裁判員制度が市民感覚を必要としていることは分かったが、評議はそれぞれの価値観、人生観のぶつかり合いで全員が納得するのは難しい」と話した。
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