「陪審法廷」楡 周平さん
市民が人を裁く意味
写真の拡大
楡 周平さん
http://www.yomiuri.co.jp/book/author/20070501bk0c.htm?from=os1
有罪か無罪か。量刑は? 被告の人生をあなたが裁判官とともに決めるかもしれない裁判員制度が2年後に始まる。司法改革への関心が高まる中、同じ市民参加型の陪審制を採るアメリカを舞台に、人が人を裁く意味を問う法廷小説だ。
「アメリカでは、日本なら情状酌量の余地が残される15歳の少年に終身刑を科すこともある。極端さに驚くと同時に、米社会の中で日本人を犯人にしたら、裁判員制度導入の問題点も抽出できると思ったんです」
舞台は米フロリダ州。隣家の少女がその養父から性的虐待を受けていることを知った日本人少年、研一は養父を銃殺してしまう。
15歳の少年に終身刑を迫る検察。犯行は筋力増強のため彼が服用したステロイドの副作用と無罪を主張する弁護側。
厳しい決断を迫られる陪審員の法廷ドラマは、「曖昧(あいまい)さを嫌い白黒をつけるアメリカと情を加味する日本」の文化的相違も浮き彫りにする。抜群の説得力は外資系企業に10年以上勤務した経験の重みだろう。
市民のみで有罪無罪だけ決める陪審制とは違いがあるが、本書の読者は、裁判員制度の是非をも考えずにはいられない。「民意を反映するのはいいこと。でもディベートに慣れたアメリカ人のような議論を日本人ができるのか、市民の参加が一審だけなのは中途半端ではなど疑問も多い」というのが、法務省赤れんが棟前で腕組みする作家の意見だ。
96年に謀略小説でデビュー、近年は、経済小説などにも作品の幅を広げてきた。「特定のジャンルを決めず、興味を覚えたものを書くのが僕のスタンス」
では、法廷小説も得意分野に? 「州ごとに制度の違う米の裁判を扱うのは大変。二度と書きたくない」とぼやくが、最初からこれだけ本格的な法廷小説をものしては、「次作の執筆を命ず」と読者陪審員は評決するに違いない。(講談社、1700円)(佐)
(2007年5月1日 読売新聞)
NULL