裁判員制度開始を前に企業に聞き取り調査/横浜地裁
裁判員制度が二〇〇九年五月までに始まるのを前に、企業から不安の声が漏れている。社員が裁判員に選ばれると業務に支障が出る恐れがあるのに加え、どんな場合なら辞退できるのか、はっきりしないからだ。横浜地裁は、こうした企業の肉声の調査に本腰を入れ始めた。今後、辞退を許可する場合の基準づくりに役立てるという。
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「専務や部長が裁判員に選ばれたら会社は立ち行かない」。横浜市で塗装会社を営む坂倉徹さんは、そう頭を抱える。横浜商工会議所の建設部委員長として横浜地裁との折衝役を務める立場でもあるが「法律を読んでも、どんな理由なら辞退できるのか、さっぱり分からない」。
最高裁の試算では、裁判員裁判の審理は約七割が三日以内に終わる見込みという。だが原則、辞退はできない。仕事を理由に辞退できるのは「著しい損害が生じる場合」と規定されるが、「表現が抽象的で不安を生んでいる」との見方が企業側にはある。
横浜地裁は四月から、同商議所の協力を得て、企業経営者を対象に聞き取り調査を独自に開始。建設業者の会合にも職員が出向いたが「『著しい損害』に当たる具体的なケースを教えてほしい」「裁判員に選ばれた社員の休暇の扱いについて労働組合との話し合いや就業規則の改定が必要」との疑問や意見が相次いだ。
このほか「法的に特定の有資格者が必要な工事現場もある。選考対象から外してもらえるのか」「船員は急に呼ばれても対応できないこともある」などの声も寄せられているという。
地裁の担当者は「業種によって事情は大きく異なる。意見や疑問は、辞退が許される場合の갘相場같となる基準づくりに生かしたい」と話す。だが最高裁によると、いくつかの地裁で同様の調査をしているが「それぞれの調査結果を基に、全国で共通の基準を使うかは未定」としている。
横浜地裁の佐藤久夫所長は「調査は基準づくりの資料収集だけでなく、広報活動も兼ねている。今後実施する裁判員の模擬選任手続きでも、企業の協力を得やすくなる礎になるのでは」と期待を込めている。
ただ「基準によって特定の業種だけが辞退を許されるようでは、国民が広く参加するという裁判員制度の理念に反する」(坂倉さん)との指摘もあり、地裁は今後、調査対象を農家や商店主などにも広げる意向だ。
◆裁判員制度 選挙人名簿から無作為に選ばれた国民(歳以上)が裁判官と刑事裁判の審理に参加する制度。対象は殺人や強姦(ごうかん)、放火など重大事件。基本的に裁判員6人、裁判官3人で審理し多数決で有罪か無罪を判断し量刑を決める。県内では本庁(横浜)と小田原支部で実施する。 裁判員制度が二〇〇九年五月までに始まるのを前に、企業から不安の声が漏れている。社員が裁判員に選ばれると業務に支障が出る恐れがあるのに加え、どんな場合なら辞退できるのか、はっきりしないからだ。横浜地裁は、こうした企業の肉声の調査に本腰を入れ始めた。今後、辞退を許可する場合の基準づくりに役立てるという。
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