スタートまでの課題は?
前向きな「参加」16%だけ/最高裁公表「意識調査」-国民の理解どう深めるか
http://www.worldtimes.co.jp/wtop/tititokoqa/tititoko080406.htm
模擬裁判で裁判員に選ばれ、宣誓する人たち(手前)正面は裁判官、右側は弁護人、左側は検察官=昨年10月、東京・霞が関の東京高裁第2研究室
父 裁判員制度が一年後にスタートし、日本の司法制度が大きく変わることを知ってる?
綾 刑事裁判で裁判官と一般の人が一緒になって、有罪か無罪か、そして有罪の場合はどんな刑にするかを決める制度でしょう。
父 良く勉強しているね。では、何人で裁判するの?
綾 確か、裁判官三人と、二十歳以上の一般人からくじで選ばれた裁判員六人だったと思うけど。
父 原則はそうだね。ただ、事実関係が明らかな事件では、裁判官一人、裁判員四人という構成になることもある。一般の国民が裁判に参加する制度を採用している国は米国、イギリス、ドイツなど多く、日本もその仲間入りしようというわけだ。
綾 これまで、一般の人には分かりにくかった司法を身近なものにするために、導入される制度だそうだけど、有罪か無罪かだけでなく、犯罪によっては被告に死刑を宣告することにもなるわけでしょう。法律の素人にはちょっと荷が重過ぎる気がするわ。
父 それはあるだろうね。法律の専門家である裁判官がいるので、裁判員には専門的な法律の知識は必要ないが、人の運命を左右することにもなるのだから、精神的に負担を感じる人は多いはずだ。
最高裁判所が最近公表した意識調査にも、そうした問題点が表れていた。裁判員制度に参加の意向を示した人は六割に達したが、「参加したい」「参加しても良い」という前向きな姿勢の参加は、合わせて15・5%しかなかった。一方、「義務なら参加」「義務でも参加したくない」という消極的な回答は、八割を超えている。
綾 裁判員制度への参加に消極的な理由はどんなことなの?
父 「素人に裁判が行えるのか不安」「冷静に判断できる自信がない」「被告の運命が決まるため責任を重く感じる」など、心理的な不安を挙げる人が多かった。もちろん、「仕事に支障」「育児・介護に支障」という理由もあるが。
綾 それじゃあ、裁判員制度がスタートしても、うまくいかない心配もあるわね。
父 最高裁は楽観的だ。陪審員制度を採っている米国では、陪審員候補者に質問状を出しても、四割強は回答がないそうだ。イギリスでも、二百二十人に出頭してもらうために、その倍以上の人に要請しているという。だから、六割の人が参加の意向を示している日本の場合は、むしろ意識が高いということになる。
綾 でも、制度が実際にスタートしたら、抵抗を感じる人はさらに増えるかもしれないでしょう。
父 その可能性はあるだろうね。だから、残された一年間に、裁判員制度に対する国民の理解を得る努力が大切なんだ。最高裁の調査では、裁判員になることへの不安は、制度についての知識が多い人ほど少なくなる傾向も出ている。
綾 裁判員制度が始まると、司法のいろんなことが変わりそうだね。
父 普通の人が有罪か無罪かを判断するのだから、いろんな面で分かりやすさが求められる。例えば、警察の取り調べの際に、被告の自白が強制されたものではないことを示す方法として、取り調べの録音・録画が行われることになりそうだ。取り調べ段階では、犯行を自白しても、裁判では否認に転じることもあるからね。
弁護士も裁判に勝つためには、裁判員の心を動かすような弁護の仕方に変わってくるだろうね。それが度が過ぎて、事実よりも弁護士や検察側のパフォーマンスで、有罪か無罪かが決まっても困るが。
綾 確かなことは、私たちももっと司法に関心を持たないといけないということだね。
(森田清策)
(本紙掲載4月6日)