裁判員制度元年、準備は着々 参加意欲に不安も
市民が裁判官とともに判決を決める「裁判員裁判」が今年から始まる。現在の刑事裁判の姿を大きく変える制度の導入。不安や抵抗も根強いなか、準備が進んでいる。
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政府は昨年4月、「裁判員制度を09年5月21日から始める」と正式に決めた。制度をつくるための裁判員法が参院本会議で成立したのは、開始日の5年前にあたる04年5月21日。それ以来、裁判所、検察庁、弁護士会の法曹三者は、市民を迎えるために準備を重ねてきた。
まず、刑事裁判のスタイルを大きく変えた。
公判を集中的に開けるよう、法曹三者が事前に争点を整理する「公判前整理手続き」を導入した。裁判員を審理で長期間拘束しないようにするための仕組みだ。
公判でのやりとりを裁判員に分かりやすくするため、パソコンを使って画像やチャート図などを見せる「プレゼンテーション」型の立証も実践されるようになった。専門家が書面を中心に細かい論点まで詰めていく従来の審理のあり方は「精密司法」と呼ばれたが、論点を大づかみに絞って裁判員に示す「核心司法」への転換が進められている。
こうした工夫と並行して、訓練のための「模擬裁判」も繰り返してきた。殺意や責任能力の有無など、実際の公判で出てきそうな争点を様々に想定して法曹三者が実施した模擬裁判はあわせて計550回にのぼる。
ただ、法曹三者が気をもんでいるのは、無作為に裁判員候補者に選ばれた市民がどれだけ裁判所の呼び出しに応じてくれるのか、ということだ。
今年1年間の候補者への通知は昨年11月末に約29万5千人へ発送されたが、年末までに、4割以上の人が辞退希望などを尋ねる調査票を返送している。最高裁が昨年初めに行った意識調査では「裁判員裁判に参加したい」「参加してもよい」と答えた人は約15%にとどまっていた。「義務なら参加せざるを得ない」という人が約45%いるものの、参加を避けたい傾向は依然として弱くないとみられる。
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裁判員法成立時、主要会派はすべて導入に賛成していた国会。しかし、市民の声を受けて足並みは乱れている。
「制度そのものには反対しないが、国民の理解は深まっておらず、不安も解消されていない」。社民党と国民新党は昨年末、問題点が解決されなければ実施を延期するよう求めていくことで合意した。民主党や、共産党にも同調を働きかけている。
当初は、昨年12月の臨時国会中に衆院法務委員会で裁判員制度に関する集中審議が開かれるはずだった。ところが、自民党が「国民も制度の意義を理解し、進んで参加していただけるよう呼びかける」とする全会一致の決議を委員会で実現しようともくろんだことで、社民党が「翼賛的な推進決議には賛成できない」と反発。この混乱で集中審議の開催は幻と消えた。
与党内も一枚岩ではない。公明党の浜四津敏子・代表代行は同月の講演で「裁判員制度そのものの見直しという話になってくるのではないか」と発言して波紋が広がった。
制度そのものに反対してきた人たちの動きも活発だ。弁護士や学者らが呼びかけてできた「裁判員制度はいらない!大運動」は「制度自体に違憲の疑いがある」と主張する。
最高裁や法務省は「国民の良識を反映させることで司法への信頼がより高まる」と制度の意義を広報している。一方、日本弁護士連合会は「誤って無実の市民を罰することがないよう、市民が自らの自由や権利を守ろう」と導入の必要性を訴えている。
裁判員法には、施行から3年で政府が必要に応じて見直す、という規定がある。「100%完璧(かんぺき)なスタートは難しい。国民がそもそも何を求めるのかによって、見直しも当然にあり得るだろう」と最高裁の幹部は話す。(岩田清隆、延与光貞、中井大助)