裁判員制度:「証人威迫」に厳しく 最高検基本方針
最高検は17日、5月に始まる裁判員制度の下での捜査や公判の基本方針をまとめた。「裁判員に分かりやすく、迅速で、的確な立証が必要」と指摘した上で、公正な判断を確保するために裁判員や証人を脅す行為などに厳しく臨む姿勢を打ち出した。取り調べの一部を録画する試みについては、4月から本格実施する方針も示した。【坂本高志】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090218k0000m040131000c.html
最高検は06年3月に裁判員制度に向けた「試案」を公表しており、その後の取り組みや模擬裁判の分析などを踏まえて基本方針をまとめた。捜査・起訴▽公判前整理手続き▽公判--の各場面で、検察官が留意すべき事項を列記している。伊藤鉄男・次長検事は「基本方針を踏まえ、制度が円滑に運営され定着するよう全力を尽くす」と話している。
基本方針の主なポイントは次の通り。
<供述調書> 法廷でのやり取りを審理の中心に置く裁判員制度でも、捜査段階の供述調書は引き続き重要な役割を果たす。必要に応じて容疑者とのQ&A方式の調書を作成するなど、裁判員が分かりやすいよう努力する。
取り調べの一部録画 容疑者が不当な取り調べを受けて自白したのではないことを効果的に裁判員に分かりやすく立証するために用いるが、取り調べの機能を害さないよう慎重さを要する。
<公判> 冒頭陳述や論告は品位あるものにしつつ、平易な日常用語で簡潔に取りまとめて行う。裁判員の理解を助けるため、現場の概略図や人間関係図などの「ビジュアル化」も活用。遺体写真などは、裁判員の心理的負担を考慮し、事前に告げた上で示すほか、遺族に配慮し、傍聴席から見えないように回覧するなど工夫する。
<偽証や証人威迫など> 裁判員が判断を誤らないよう、偽証、証拠隠滅、証人威迫などについては積極的に罪の成否を検討し、従来より厳格な姿勢で臨む。事件関係者から裁判員に働き掛けや威迫行為があれば警察と協力して厳正に対処する。
<被害者参加制度> 実際の公判で検察官と被害者参加人に食い違いが生じないためにも、意思疎通に万全を期す。
◇遺体写真などケア必要
最高検が基本方針を公表したのは、法律知識や裁判経験がない裁判員に分かりやすく、迅速な立証方法を全国の検察官に浸透させる必要があったためだ。だが残された課題は少なくなく、本番開始後も新たな課題が生じる可能性もある。裁判員が過重な負担を感じず公正な裁きができるよう、法曹関係者は努力を怠ってはならない。
検察は新制度に向け、多くの取り組みを重ねてきた。基本方針に盛り込まれた立証の「ビジュアル化」はその一例で、最近の重大事件では法廷で写真や見取り図を映写することが多い。ただ、遺体などせい惨な写真が裁判員に与える衝撃を懸念する声もあり、十分な事前説明や心理面のケアは欠かせない。
容疑者が自らの意思で自白したことを証明するため、取り調べの一部録画も試行した。最高検は有用性を強調するが、日弁連などが主張する全過程の録画(可視化)に対しては「真実を引き出せなくなる」と拒絶しており、今後も議論になろう。
迅速な裁判の実現に向け、基本方針は公判前整理手続きでの争点絞り込みも重視する。裁判員の負担を考えると審理期間の短縮は大前提だが、「拙速にならないか」と懸念する識者もおり、最近では手続きに問題があったとして審理を1審に差し戻した2審判決もあった。審理の迅速化と真相解明の在り方についてもなお試行錯誤が必要だろう。【伊藤一郎】