【裁判員制度元年】放送局、試行錯誤 「発言自由」でも「犯人扱い×」
国民が刑事裁判に参加する裁判員制度がスタートした。報道機関の中でも映像や音声などで印象を左右しやすい放送局では、裁判員に選ばれる国民への影響を考え、逮捕や裁判の過程で犯人を断定する表現にならないよう徹底する方針を打ち出している。ただ関係者からは「やってみないと分からない面もある」「報道に触れにくくなる危険もある」といった懸念の声も聞こえてくる。(草下健夫、三宅陽子)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090524/trl0905240914000-n1.htm
NHKは昨年12月にガイドラインをまとめ、「容疑者側の主張をできる限り取材・放送する」「専門家のコメントは容疑者を犯人と断定した言い方にならないよう注意する」など、視聴者に予断を与えない配慮を打ち出した。
出演する外部の識者にも、規定はないが「出演交渉時や収録前などに留意を求めることがある」(広報部)という。
今年から社会部でガイドラインを試行、4月から全局で導入した。容疑者が犯行を否認している場合、ニュース原稿の冒頭部分で「容疑を否認している」と入れるほか、「~と供述していることが(警察など)への取材で分かりました」と、情報の出所をできるだけ具体的に示している。
被害者遺族の談話などは「感情的な発言だけを強調せず、事件全体のバランスを考慮する」としている。
民放連でも昨年1月に「被疑者・被告人の主張に耳を傾ける」「予断を排し、その時々の事実をありのまま伝える」「未確認の情報はその旨を明示する」などの項目からなる指針をまとめた。
これを受けて各局も「予断を与えないよう、公平、公正、正確を三原則として放送する」(フジテレビ)、「裁判や事件報道の留意点を社員やスタッフに周知している」(日本テレビ)と対応している。
民放連の方針に沿いながらも柔軟さを残すべきだとする声もある。テレビ東京の宮田鈴子報道局次長は「本番直前に注意喚起することはあるが、コメンテーターは自由に発言する。台本を読むわけではない」とした上で、「判断に迷うケースは起きると思う。実際にやってみないと」と課題を示す。
自由度の高いトークを特徴とするラジオ各局も対応に努めている。文化放送の清水克彦編成部次長は「番組で、『これは死刑でしょう』というタレントはいる。その場合、ディレクターの指示で(他の出演者が)『でも分かりませんよね』などと言って中立に戻すこともある」。
ニッポン放送の上柳昌彦チーフアナウンサーは「容疑者を犯人視しない、情報の出所をはっきりする、と整理しながら語るのは大変。だんだんラジオが報道に触れないようになるのが一番危険」と懸念する。