【裁判員制度】「対象除外」で迫られる難しい判断
暴力団が被告となった殺人事件で、さいたま地検が「裁判員裁判の対象事件からの除外」を裁判所に申請する方針を固めたことが、波紋を呼んでいる。申請されるのは、裁判員らに被告からの“お礼参り”などの危険が及びかねない場合、裁判所の決定で適用される規定。しかし、適用が乱発されれば、「国民の視点を刑事裁判に反映する」という制度の趣旨を損ないかねない。法曹関係者からは「運用は厳格に行うべきだ」との声も出ている。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090730/trl0907302046011-n1.htm
さいたま地検が裁判員裁判からの除外を求める方針を固めたのは、埼玉県ふじみ野市で昨年4月、指定暴力団住吉会系幹部が射殺された事件。
被告は組織犯罪処罰法(組織的殺人)罪で起訴されている山口組系暴力団の男。地検は「近年希(まれ)な大規模抗争事件」と位置付け、裁判員裁判になった場合、裁判員に危険が及ぶ可能性があると判断した。
裁判員法では、除外適用対象となる事件を明確にしてはいないが、暴力団のほか、オウム真理教のようなカルト集団を主に念頭にしているとされる。
従来も、裁判官に危害が加えられる可能性が高い刑事裁判では、担当裁判官の自宅や通勤経路、裁判所などに警備がつくことがある。一方で、暴力団抗争関連の裁判にかかわる裁判官すべてが、危険な立場に置かれてきたわけでもない。
あるベテラン刑事裁判官は「暴力団関連というだけで除外が認められれば、暴力団がかかわる事件に国民の視点が反映されなくなる」と慎重な適用を求める。「裁判員が恐怖感を抱くのと、実際に危険があるということは全く別の問題。『危害が加わる恐れ』をどう線引きするのか、どの程度具体的な危険が迫っているのか、判断は難しい」とも指摘する。検察関係者からも「厳格に運用すべきだ」との声が相次ぐ。
裁判員法に除外規定を設けたものの、最高裁や法務省が、「どんな場合が除外されるのかをほとんど議論してきていない」(法務省関係者)という不備を指摘する声もある。
もし、さいたま地検が実際に請求を行えば、結論がどちらになろうと、初のケースとして今後への影響は大きい。先例がない中、さいたま地検、申請を判断するさいたま地裁は難しい判断を迫られることになる。(大泉晋之助)
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裁判員対象事件からの除外 裁判員法3条では「被告の言動などから、裁判員や家族に危害が及ぶ恐れがある場合は裁判員裁判の対象から除外できる」と規定。検察官や被告、弁護人が除外を請求できる。事件を担当する裁判官以外の裁判官の合議体が、検察官や被告、弁護人の意見を聞いて請求に対する決定をする。