【裁判員2例目】守秘義務に抵触? 会見で地裁が発言制止【裁判員2例目】守秘義務に抵触? 会見で地裁が発言制止
「公開」か「守秘義務」か-。さいたま地裁で開かれた全国2例目の裁判員裁判。判決後の会見で裁判員の発言に対して、地裁職員が裁判員の発言を遮るハプニングがあった。司法への国民参加を最大目的にする裁判員制度。一方で、裁判員には重い守秘義務も課せられている。会見の光景は、新制度が抱える難しい一面を象徴した。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090812/trl0908122357024-n1.htm
■地裁側が首振る
判決の言い渡し後に、裁判員と補充裁判員8人が出席して行われた記者会見。回答の制止は、判決言い渡し後に田村真裁判長が三宅茂之被告(35)に「十分やり直しが効く年齢」などと説諭した場面に関し、記者が「これは裁判員のみなさんの言葉を代弁したものなのか」と質問した場面で起きた。
3人の裁判員が答えた後、4人目の裁判員が部屋の後ろに控えていた地裁職員に「言っていいですか」と尋ねると、職員が首を振って制止。この裁判員は質問には答えなかった。
地裁は制止の理由について、「評議の内容と、裁判員が裁判長(の見解)に賛成したか、反対したかを答えてしまう可能性があり、それは守秘義務に抵触する可能性があったと判断した」と見解を述べている。
地裁の判断について、ある裁判所関係者も「評議で決まった『説諭』やその内容について、過程や賛否を話すと守秘義務に違反する可能性はある」と指摘している。
ただ、制止前に回答した3人は順番に「私個人は代弁してもらったと思っている」「自分も(前の発言者と)同じ」という趣旨の回答をしており、整合性に疑問は残る。
会見の中で記者からは「裁判長が話したことについて聞いており、守秘義務に抵触しないのではないか」という意見も出たが、地裁は「評議の内容が特定されかねない」と見解を変えなかった。
裁判員の記者会見は、日本新聞協会が最高裁と意見交換し、制度定着に向けて裁判所側の理解を得て実施されている。意図せずに裁判員が守秘義務違反を犯す事態を防ぐため、裁判所の担当者が会見に立ち会うことでも合意している。
新聞協会は、取材や報道には裁判員法の趣旨と経験者の意向を踏まえるとした上で、裁判員経験者に協力を呼びかけていた。最高裁も「経験者の声が広く伝わることは重要」としている。東京地裁で6日にあった裁判員裁判の会見では、守秘義務違反にあたるとされた部分はなかった。
■難しい評議
地裁によると、量刑を決める12日の評議は非公開で、午前9時半に始まり、午後0時半に終了。裁判員の疲れを考慮し、途中2回の休憩があった。被告は起訴事実を認めているこの裁判では、量刑判断が最大の注目点だ。
検察、弁護側双方は11日の公判で行われた論告、最終弁論の中で、過去の殺人未遂事件の判決例を提示して、裁判員に訴えた。検察側は「殺人未遂罪で執行猶予が付いたのは、被害者が許している場合などに限られる」などと主張。弁護側は、裁判例を単純にグラフ化し、懲役6年が最も多いが、執行猶予付きの判決も多いことを指摘した。
地裁は焦点の量刑について、類似事件の量刑の分布状況が棒グラフで表示される「量刑検索システム」を活用した。公判で違った視点からの過去の量刑を見せられた裁判員は、地裁の量刑検索システムで検索した量刑分布図を見ながら、話し合いをしていたという。
実刑か執行猶予付き判決か-。それぞれの裁判員が、自分なりに結論を出さなければならない。それぞれ異なった結論になった可能性もある。30代の男性裁判員は「(被害者と被告に)もう一度話を聞ければよかった」と逡巡(しゅんじゅん)したことをうかがわせる感想を漏らしていた。
出された判決に、さいたま地検の長崎誠次席検事は「おおむね裁判員のご理解が得られた」と評価のコメント。一方、弁護人の間川清弁護士は「主張が認められず非常に残念。評議の内容は分からないので、どれだけこちらの主張を酌んで決めたのか」と述べた。
【裁判員の守秘義務】 裁判員は、判決内容を検討する評議で出た意見や話し合いの経過、「多数決では何対何だった」という評決の結果など職務上知り得た秘密について、漏らしてはならないと裁判員法で定めている。違反すれば最高で6月以下の懲役か50万円以下の罰金。日弁連は3年後の制度見直しに向け、検証時には守秘義務を解除するよう提言している。