「よく分かってもらえた」 検察、裁判員裁判に手応え
市民の視点や感覚が刑事裁判に反映される裁判員制度が始まって半年以上がたった。さいたま地裁で開かれた裁判員裁判に携わったさいたま地検公判部副部長、西村尚芳検事が産経新聞の取材に応じ、新制度への検察の取り組みなどについて語った。「裁判員には検察官の意見をよく分かってもらえた」と、手応えを感じていた。
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/091222/stm0912221621009-n1.htm
これまでさいたま地裁で開かれた裁判員裁判の起訴罪名は殺人未遂、強盗致傷、現住建造物等放火、通貨偽造など。争点が量刑に絞られていたものから、起訴事実を否認、無罪を主張したものまであった。
西村検事によると、裁判員裁判になって検察側立証で変わった点には、論告で被告にとって有利な事情についての意見も丁寧に述べるようになったことがあるという。
こうした検察側の変化の背景には、裁判員制度特有の事情がある。
これまでの刑事裁判では、検察側は供述調書などの書証に被告にとって斟酌(しんしゃく)すべき事情を書いてきたが、公判でどこまで説明するかは検事の判断に委ねられていた。検事の多くは「書証を読んでもらえればわかる」といった裁判官との“阿吽(あうん)の呼吸”で裁判を進めていた。
しかし、「目で見て、耳で聞いて分かる裁判」を目指す裁判員裁判では、書証は簡潔にまとめられ、極力減らされる傾向にある。
検察側の変化は、こうした傾向の中で従来通りに被告の非を中心に述べると、裁判員に「検察官は証拠を偏ってみているのでは」といった誤解を生じさせてしまう可能性を考慮してのことだという。
裁判員を前に事件について説明する際、検察官には「一発勝負。下手にやったらまずい」といった独特の緊張感があるという。
特に裁判員の所作には注目し、「どれだけ証拠の内容を理解してくれているのか確認している」そうだ。西村検事は「裁判員は被告人質問でポイントを突いた質問をしてくれた。安心した」と振り返った。
証拠については「少なすぎる」と不満に思う裁判員もいると感じているという。ただ、「情報量が多すぎても裁判員の頭はパンクしてしまうし、あまりに長い供述調書を読んだら退屈するだろう」として、試行錯誤を続けている。
一方、こうした証拠を適度に絞り込む作業については、「想像以上に大変で労力と時間を要する」とも打ち明けた。
最後に、これまでの裁判員裁判で得た予想外の収穫に言及。「裁判員は本当に真剣にわれわれの公判活動を見てくれた。検事にとって刺激になっているし、これからも恥ずかしい活動はできない」と結んだ。