裁判員「忌避」頻繁に、趣旨と違って法廷戦術
裁判員の選任手続きで、検察、弁護側が理由を示さずに特定の候補者の選任を拒否する「忌避」が頻繁に行われている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091226-OYT1T00559.htm
裁判員は無作為で選ばれるのが原則だが、裁判員裁判が始まった8月から3か月間で、忌避された候補者は229人に上った。
被告側が、裁判を有利に進めるために忌避をした結果、候補者の半数が除外されたケースもあり、「国民の幅広い層の意見を反映させる裁判員制度の趣旨に反する」との声も上がっている。
裁判員候補者の忌避は、検察側と弁護側が特定の候補者を裁判員に選ばないよう求める制度。理由を明らかにする必要はなく、補充裁判員の数に応じ、それぞれ最大7人(弁護側は1被告につき)まで認められる。
奈良地裁で11月20日に行われた選任手続きでは、辞退が許可された人などを除く候補者36人のうち21人が除外される事態となった。
集団強姦(ごうかん)致傷罪などに問われた20代の4被告側はそれぞれ3~6人の計18人、検察側も3人を外した。懲役6年の求刑に対し、同3年、保護観察付き執行猶予5年の判決を受けた被告の弁護人は、「我々の主張を理解してくれそうにない人を直感や雰囲気で外した。判決への影響はわからないが、被告の利益のために忌避を使うのは当然」と話す。別の被告の弁護人は「若者の犯罪に偏見を持っている可能性がある」として高齢者を忌避した。
青森地裁で11月17日に行われた選任手続きでは、強盗傷害罪などに問われた男性被告側が、「不利な判断をされると困る」として、被害者の女子大学生と同じ大学の卒業生と若い女性ら3人を忌避した。
最高裁によると、8~10月に判決のあった46件で忌避された候補者は229人。選任手続きに出席した人の13%に上り、1件当たり約5人に達した。ある刑事裁判官は「予想より多い。本来の趣旨に反して戦略的に使われている面もあるのではないか」と話す。
選任手続きでは、裁判所が「不公平な判断をする恐れがある」と判断した候補者を不選任とする。そこまでは判断しきれない候補者について、除外できるよう設けたのが、検察官と弁護人による忌避の制度。
その際、忌避が裁判を有利に進めるための戦略として使われないよう、候補者に対する質問は弁護人や検察官の求めを受けて裁判長が行う。候補者が有利な判断をしてくれるかどうか見極めるための質問は認められていない。
日本弁護士連合会裁判員本部も、忌避の現状について「乏しい情報の中で、当てずっぽうでやるしかなく、効果は未知数」としている。しかし弁護士の間では「被告に有利になるなら忌避を活用すべきだ」との考えも根強い。
◆裁判員の選任手続き=裁判員候補者を裁判所に呼び、裁判官、検察官、弁護人の立ち会いの下、裁判員を選ぶ手続き。多くの場合、初公判当日の午前中に行われる。まず裁判所が裁判員制度や審理する事件の概要を説明し、裁判長が、辞退希望の有無などを質問。その後、辞退が認められた人や検察・被告側から忌避された人などを除き、残った候補者の中からくじで裁判員と補充裁判員を選ぶ。
(2009年12月26日14時35分 読売新聞)