ちばニュース<5> 『民意』薬物密輸に厳しく 裁判員裁判
八月に東京地裁で開かれたのを皮切りに、全国で始まった裁判員裁判。重大事件の刑事裁判で、市民が審理に加わるようになった。県内でも大阪に次ぎ全国で二番目に多い十三事件が年内に審理され、いずれの被告にも有罪判決が出た。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20091229/CK2009122902000090.html
千葉地裁によると、十三回で計百十二人が裁判員(補充裁判員含む)に選出された。裁判員の候補者として呼び出し状が送られたのは九百五十一人に上った。
法廷の光景も変わった。法壇の中央に座る三人の裁判官の両側に裁判員が二手に分かれ三人ずつ並ぶ。二~三人の補充裁判員はその後方に控え、視覚的にも「司法改革」を実感させた。
裁判員は被告の主張などに熱心に耳を傾け、表情やしぐさも見逃すまいと真剣な表情を見せた。被告に積極的に質問したり、被害者の証言に涙を流す人もいた。
判決後の記者会見で、裁判員経験者の多くが「裁判は初めて」「敷居が高い」「法律の知識がない」と、当初は不安や戸惑いがあったと話した。だが、疲れた表情を見せながらも「貴重な経験」「制度をもっと広めたい」などと語る経験者もいて、充実感がうかがえた。
成田空港を抱える本県では、裁判員裁判の対象となっている覚せい剤の密輸事件が、十三件のうち七件を占めた。覚せい剤の密輸は、最高刑が無期懲役の重罪だ。だが一般の人にとってなじみは薄く、裁判員の対象事件として妥当かどうか専門家の間でも意見が分かれる。
この点について、覚せい剤密輸事件の裁判員経験者は「身近ではないが、社会的影響が大きい」「水際(での阻止)が重要」など理解を示す人が多かった。一方で、「(生活から)遠い犯罪」「なじまない」との意見もあった。
密輸に対し、裁判員の「民意」は厳しい判決をもたらしたようだ。七件のうちいくつかで、従来の判例傾向より重い判決が出ている。判決理由では「薬物事犯が社会問題になっている」など、芸能界の薬物汚染問題に触れたとみられる部分もあった。
千葉地裁では来年以降、千葉市花見川区の殺人・連れ去り事件や、市川市の英国人女性殺害事件など、社会の注目を集めた事件の裁判員裁判を控える。両事件では弁護団が結成され、争点の複雑化も必至。裁判員の負担も大きくなりそうだ。
裁判員法には開始三年後に制度を見直す規定がある。順調な滑り出しだったといえるが、制度の今後を考えるためにも、経験者の意見を一つ一つ丹念に拾い、注視していきたい。 (那須政治)