【裁判員法廷】慎重に評議 大幅延長
◆主張に大差 刑罰に悩む◆
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県内初の裁判員裁判は10日、金沢地裁で判決公判があり、殺人未遂罪に問われた加島正人被告(35)=能美市松が岡5丁目、元飲食店従業員=に対し、神坂尚裁判長は懲役5年6カ月(求刑懲役10年)を言い渡した。裁判官と裁判員で判決を話し合う評議は大幅に時間を延長し、予定より約1時間遅れで開廷。公判後に記者会見に応じた計7人の裁判員と補充裁判員は「疲れた」と口をそろえ、人を裁く重圧に緊張し続けた3日間の感想などを語った。
この日の開廷予定は午後3時半。その時間の少し前に裁判所の男性職員が傍聴席に向かって「開廷は午後4時に変更されました」と声を張り上げた。だがその予定も延長され、開廷したのは午後4時40分だった。午前9時から始まった評議が、約30分の昼食休憩を挟んで午後4時まで続いたためだった。
9日の公判では、検察側が懲役10年を求刑し、弁護側は同1年3カ月が適当だと主張。法律の専門家が提示した刑罰には大きな差があった。だが裁判員を務めた土屋悦子さん(69)は「法律に沿った刑罰とは何か、今までの判例もあげてもらって自分の意見を考えた」と話す。裁判員たちは悩みながらも、それぞれの意見を出し合った。
公判が開かれ、神坂裁判長は「主文、被告人を懲役5年6カ月に処する」と判決文の朗読を始めた。「背中がぞくっとする感じがした」とある裁判員は振り返る。裁判員6人は一様に手元の資料に目を落としていた。朗読中も、証言台の前に立つ加島被告に、裁判員が目を向ける場面はほとんど見られなかった。
閉廷からおよそ30分後、裁判員たちは記者会見室に疲労の表情を見せながら入室した。「とても疲れた」「終わってほっとしている」。口を開いてまず出たのは「一日一日が緊張だった」という3日間の重圧から解放された言葉だった。
裁判官と裁判員で考える被告人へのメッセージ「説諭」の読み上げは、今回の判決ではなかった。会見で「被告へ伝えたいことは」と問われると、裁判員を務めた西野一則さん(55)は「被告人には素晴らしい内妻(事実婚の妻)がついている。母親と内妻のことを考えながら刑に服して更生してほしい」と答えた。
今後、裁判員になる人に伝えたいことについて、補充裁判員を務めた伊藤勝也さん(68)は「堅苦しい雰囲気はなく、自分の意見をはっきり言えた。選ばれたら積極的に参加してほしい」。西野さんも「専門用語も少なく、わかりやすい公判だった。何も心配する必要はないと伝えたい」と話した。
~*自首認定 減刑は認めず(判決要旨)*~
本件では自首の成立が争点で、被告人が犯罪事実を自発的に申告したかどうかに争いがあった。証拠や関係者の供述によれば、現場に臨場した警察官は犯人を特定していたとはいえず、被告人は警察官に直ちに犯罪事実を認めていることから、自首が成立すると判断した。
被告人は、被害者の胸や腹をめがけて、刃体の長さ約29・9センチの牛刀で刺した上、傷の深さは約14・9センチと深く、死亡の危険もあったことから、強い殺意による危険な犯行だったといえる。
犯行の経緯として、厳しい労働条件からストレスがたまっていたとの事情はあるが、ストレス発散のためにキャバクラなどで被害者が経営する店のお金を使い込み、それが発覚するのを恐れて犯行に及んだとの動機は身勝手で、同情すべき余地は少ない。被告人の刑事責任は重いと言わざるをえない。
ただ、自首が認められ、犯行は未遂にとどまっている。謝罪、反省をして、内妻による監督が期待できることなど、酌むべき事情も認められる。
しかし、それらの事情を最大限考慮しても、動機や犯行態様、結果などに照らすと、法律上の減刑をするべき事案とは到底認められない。